ホームページ制作費は経費?資産?勘定科目と税務処理を徹底解説【金額・ケース別判断ガイド】

ホームページ制作費は経費?資産?勘定科目と税務処理を徹底解説【金額・ケース別判断ガイド】

「ホームページ制作を依頼したいが、これはその年の経費として一度に落とせるの?」
「システム機能も入れてもらう予定だが、資産として計上して減価償却しないといけないの?」

経営者様やWeb担当者様からホームページ制作のご相談をいただく際、こうした会計・税務処理に関するご質問をいただくことが少なくありません。ホームページ制作費は、サイトの役割や機能、金額、更新の前提によって扱いが変わるため、自己判断しづらいテーマです。

大まかな方向性としては、会社案内やサービス紹介が中心の、一般的な企業ホームページの多くは、会社や商品のPRを目的としたものですので、「広告宣伝費」としてその年の経費に一括計上できるケースが多いと考えられます。一方で、ECサイトや予約システムなど、業務システムとしての役割が大きいものは、「資産」として計上し、数年に分けて費用化する必要が生じる場合もあります。

この記事では、ホームページ制作費の税務上の考え方について、「基本的な枠組み」「広告宣伝費になるケース」「資産計上が必要なケース」「金額ごとの扱い」「運用費の勘定科目」「よくある質問」という流れで整理していきます。
最終的な判断は顧問税理士の先生にご相談いただくことを前提に、経営判断の材料としてお役立ていただければ幸いです。

目次

1. ホームページ制作費の会計処理における基本原則

まずは、ホームページ制作費をどのような観点で考えるのか、全体の枠組みを確認しておきましょう。会計上、ホームページは大きく分けると次のどちらの性格が強いかで判断が分かれます。

  1. 広告宣伝の媒体としての側面
  2. ソフトウェア(業務システム)としての側面

この「どちらの色合いが濃いか」が、経費処理なのか資産計上なのかを考えるときの出発点になります。

多くの企業サイトは「広告宣伝費」として処理される

一般的な企業ホームページは、会社や商品・サービスを知ってもらう広告・PRの場として作られます。ニュースやブログ、採用情報などを更新していくことも多く、当初の内容は時間の経過とともに書き換えられていきます。

こうした性格から、標準的な企業サイトについては、多くの場合、「広告宣伝費」として、その年の経費(損金)に一括で計上する処理が選ばれることが多いと考えられます。

ここでいう「効果が1年以上続かない」というのは、「1年でサイトを閉じる」という意味ではなく、「内容が更新されていくため、当初の制作物が固定した資産とは言いにくい」というイメージに近いものです。

「資産」として扱うケースもある

一方で、ホームページが単なる情報発信の場を超えて、業務処理のためのシステムとしての役割を持つ場合は、税務上「ソフトウェア」として扱われることがあります。
この場合は「無形固定資産(目に見えないソフトウェアなどの資産)」として計上し、通常は5年を目安に減価償却していくことになります。

この「経費」か「資産」かの線引きが、ホームページ制作費を考えるうえでの一番のポイントです。
次の章から、もう少し具体的に見ていきます。

2. 「広告宣伝費」として一括経費になるケース

では、どのようなホームページであれば、その年の経費として全額を処理しやすいのでしょうか。具体的なパターンを整理してみます。

更新を前提とした一般的な企業ホームページ

ホームページ制作費が「広告宣伝費」として経費処理しやすいのは、更新を前提とした一般的な企業サイトです。

例えば、以下のような内容を含むホームページは、情報の入れ替えを行いながら運用していくことが多いため、広告宣伝費として扱われるケースが一般的です。

  • お知らせ・ニュースリリース
  • ブログやコラム記事
  • 商品情報・サービス情報の追加や差し替え
  • 採用情報・募集要項の更新
  • イベントやセミナー情報の掲載

最近は、WordPressなどのCMS(更新システム)を導入し、社内でお知らせやブログを更新される会社様が増えています。

このような「情報を入れ替えながら運用するホームページ」は、多くの場合、制作費全体を広告宣伝費として、その年度の損金に算入する方法が検討されます。

SEO対策費用も基本的には広告宣伝費

ホームページ制作とあわせて行うSEO対策(検索エンジンで見つけてもらいやすくするための施策)や、納品後に行う継続的なSEO施策も、性格としては広告宣伝に近い費用です。

キーワードの選び方や、タイトル・ディスクリプションの調整、内部リンクの見直し、コンテンツSEO(記事制作)などは、検索結果での露出を高め、問い合わせや資料請求につなげるための販促費という位置づけになります。

その効果は時間とともに変化し、継続的な調整も必要になるため、固定した資産というよりも、広告宣伝費として考えるのが自然です。

簡単な問い合わせフォーム機能

「フォームが付いていると資産になるのでは?」と不安に感じられることもありますが、一般的なお問い合わせフォーム程度の機能であれば、通常は広告宣伝を行うホームページに付随する機能と考えられます。

例えば、次のようなフォームが該当します。

  • 問い合わせフォーム
  • 資料請求フォーム
  • 単純なセミナー申し込みフォーム

この程度の標準的なフォーム機能であれば、サイト全体の制作費に含めて広告宣伝費とするケースが多く、「フォームが付いているから必ず資産」という考え方にはなりません。

3. 「資産計上(ソフトウェア)」が必要となるケース

注意したいのが、ホームページ自体に業務を支える本格的なシステム機能が組み込まれている場合です。このようなケースでは、税務上、ホームページの一部が「ソフトウェア」として資産計上の対象となることがあります。

高度な機能(プログラム)を持つホームページ

次のような機能を含むホームページは、単なる情報発信ではなく、会社の業務処理の一部を担うシステムとしての性格が強くなります。

EC機能(オンラインショップ)

商品検索、ショッピングカート、決済処理、受注管理などを行う仕組み

会員制サイト・マイページ機能

ユーザーごとにID・パスワードでログインし、個別情報を閲覧・変更できる機能

高度な検索システム

不動産情報や求人情報など、大量のデータベースから条件を絞り込んで検索できる機能

オンライン予約システム

空き状況の確認から、予約確定・メール通知までを自動処理する仕組み

こうした機能は、会社の業務フローを支える「仕組み」として継続的に使われるため、税務上はソフトウェア(無形固定資産)として資産計上し、原則5年で減価償却する扱いが検討されます。

制作費の内訳による分け方が重要

ここで大切なのは、ホームページ全体の費用がすべて資産になるわけではない、という点です。
例えば、総額300万円のホームページ制作プロジェクトがあったとします。

  • デザイン・コーディング・文章作成など、Webサイト制作部分:100万円
  • 予約システム開発など、プログラム開発部分:200万円

このように見積書や請求書の段階から「制作部分」と「システム開発部分」を分けて記載しておけば、次のように性質に応じて処理を分けて検討しやすくなります。

  • 制作部分 100万円:広告宣伝費などで一括経費
  • システム部分 200万円:ソフトウェアとして資産計上(5年で償却)

逆に、見積書に「Webサイト構築一式 300万円」としか記載されていないと、どこまでが広告宣伝費で、どこからがシステムなのか判断しづらくなります。場合によっては、全体がソフトウェアと見なされてしまうリスクもゼロではありません。

制作会社に依頼する段階で、「サイト制作費」「システム開発費」を分けた内訳を作ってもらうことが、会計処理の選択肢を広げるポイントとなります。

更新を前提としない静的なホームページ

現代では数は少ないものの、なかには「内容をほとんど更新せず、長期間そのまま使い続けることを前提にしたホームページ」もあります。

例えば、以下のようなケースなどです。

  • 期間や内容が変わらない製品の特設ページ
  • 会社概要だけを掲載した極めてシンプルなサイト

このような場合、支出の効果が比較的長期間にわたって固定的に続くと考えられるため、繰延資産や長期前払費用として扱うケースが検討される場合もあります。
ただし、ホームページ制作費をどの勘定科目に分類するかは契約内容や使い方によっても異なりますので、個別の案件については顧問税理士の先生と相談しながら進めることをおすすめします。

4. 制作金額による会計処理の違い(少額減価償却資産など)

ホームページにシステム機能が含まれており、「資産」としての性格がある場合でも、金額によっては特例を使って早めに経費化できる場合があります。

中小企業にとっては節税面で重要なポイントですので、金額ごとに整理しておきましょう。

A.10万円未満の場合(消耗品費等として処理)

制作費用(システム部分を含む)が1件あたり10万円未満であれば、その内容が資産性を持つものであっても、実務上は「消耗品費」等としてその期の経費にすることが認められているケースが多いです。

例えば、次のようなケースが該当します。

  • 簡易なLP(ランディングページ)の制作
  • 既存サイトのごく小さな改修

金額が少ない場合は、複雑に考えず、その期の費用として処理できるケースが多いと考えられます。

B.10万円以上〜20万円未満の場合(一括償却資産)

10万円以上20万円未満の資産については、「一括償却資産」として処理する方法があります。これは、通常の耐用年数(ソフトウェアであれば原則5年)にかかわらず、3年間で均等に償却できる制度です。

5年よりも早く費用化でき、償却資産税の対象外となるため、ホームページの一部システムがこの金額帯に収まる場合は、一括償却資産を選択することで、資金繰りや税負担の平準化にプラスになることがあります。

C.30万円未満の場合(少額減価償却資産の特例)

青色申告をしている中小企業者等の場合、1件あたり30万円未満の資産については、「少額減価償却資産の特例」を利用できるケースがあります。

この特例を使うと、本来は5年で償却するソフトウェアであっても、取得価額の全額をその事業年度の経費(損金)として計上できるようになります(年間合計300万円までが上限)。

例えば、25万円の予約システムを導入した場合でも、この特例を使えれば、資産計上せずに全額を当期の経費にできる可能性があります。

なお、この特例には適用期限や詳細な要件があります。最新の税制改正の内容や、自社が対象に当てはまるかどうかについては、必ず税理士の先生に確認するようにしてください。

D.30万円以上の場合(原則どおり資産計上)

上記の特例の対象外となる場合や、30万円以上のシステム開発費用については、原則どおり「無形固定資産(ソフトウェア)」として計上し、5年で減価償却していくことになります。

初年度に一気に経費化することは難しいものの、その分、数年にわたり費用計上されることで、利益を平準化する効果もあります。

5. ホームページ運用にかかる費用の勘定科目(ランニングコスト)

ホームページは、制作して公開したら終わりではありません。日々の運用・維持に費用がかかります。これらのランニングコストについても、どの勘定科目で処理するか整理しておきましょう。

費用項目一般的な勘定科目解説
ドメイン取得・更新費通信費/広告宣伝費年間数千円〜数万円程度の費用であり、支出時の経費として処理するのが一般的です。
レンタルサーバー費用通信費/広告宣伝費情報発信のためのインフラコスト。通信費としてまとめる会社も多くあります。
SSL証明書費用通信費/広告宣伝費セキュリティ対策の一環。1年ごとの更新であれば、その期の経費として処理します。
保守管理・メンテナンス費支払手数料/広告宣伝費制作会社やシステム会社に支払う月額保守費。役務提供への対価として処理します。
コンテンツ更新費広告宣伝費バナー作成や記事制作を外部に依頼する場合の費用。販促費として扱うのが一般的です。
SEOコンサルティング費広告宣伝費/支払手数料集客を目的としたコンサルティング費用。広告宣伝費としてまとめるケースが多いです。

実務上、どの勘定科目を使うかは会社ごとの方針によって異なります。大事なのは、「通信費」でまとめるのか、「広告宣伝費」でまとめるのか、「支払手数料」を使うのかといったルールを一度決めたら、同じ考え方で継続して処理することです。途中で分類を頻繁に変えてしまうと、決算書の比較がしづらくなってしまいます。

6. よくある質問(Q&A)

ここでは、ホームページ制作の会計処理について、実際にいただくことが多いご質問をQ&A形式でまとめました。

Q1.ホームページをリニューアルした場合の処理は?

A.基本的な考え方は、新規制作と大きく変わりません。

デザインや文章の刷新など、広告・PRの質を高めるためのリニューアル費用については、広告宣伝費として一括経費処理されるケースが多いと考えられます。

一方で、新たにEC機能を追加したり、予約システムを導入したりする場合には、そのシステム開発部分についてはソフトウェアとして資産計上し、減価償却が必要となることがあります。

また、既存のシステムを改修する場合には、機能を良くするための改良・グレードアップにあたるものは資本的支出として資産に加える考え方が検討され、故障の修理や老朽化した部分の取り替えなど現状維持のための支出は、修繕費として経費処理できる場合があります。

このあたりは、契約内容や作業の実態によって判断が分かれますので、見積書を持参のうえ、顧問税理士の先生に確認されるのが安心です。

Q2.サーバー代を数年分まとめて支払った場合は?

A.支払い期間によって、「前払費用」や「長期前払費用」として処理する場合があります。

1年分をまとめて前払いした場合には、一定の条件のもと、その期の経費として処理できる特例があります。一方、2年分・3年分など、1年を超える期間の利用料を先に支払った場合には、決算日時点でまだサービスを受けていない期間に対応する部分を、前払費用または長期前払費用として資産計上し、期間に応じて費用化していく考え方が一般的です。

サーバー会社との契約期間や支払条件によって扱いが変わりますので、契約書の内容を確認しながら、税理士の先生に相談されるとよいでしょう。

Q3.CMS(WordPress等)の導入費用は資産ですか?

A.多くの場合は、広告宣伝費に含めて考えるケースが一般的です。

WordPressなどのオープンソースCMSを使って企業サイトを構築する場合、CMSそのものは無償で提供されており、既存の仕組みを利用して情報発信の基盤を整えるという性格が強くなります。このため、通常の企業ホームページであれば、制作費と一体として広告宣伝費とするケースが多いと考えられます。

ただし、会員管理や受発注管理、顧客別のマイページなど、WordPressをベースにした大規模な独自機能の開発を行う場合には、その開発費用はソフトウェアとして資産計上する必要性が高まります。

どこまでが「情報発信のための仕組み」で、どこからが「業務システム」なのか、線引きが難しいことも多いため、制作会社には制作費と開発費を分けた見積書を出してもらい、その内訳明細を添えて税理士の先生に判断してもらう進め方がおすすめです。

まとめ:正しい知識で、ホームページ制作を経営に活かす

ここまで、ホームページ制作費の会計処理について、基本的な考え方と具体的なパターンを整理してきました。最後にポイントを振り返ります。

  1. 多くの企業ホームページは、広告宣伝費として一括経費にできる場合が多いこと。
  2. EC機能や予約システムなど、業務システムとしての側面が強い部分は、ソフトウェア(無形固定資産)として資産計上が必要になることがあること。
  3. 金額が10万円・20万円・30万円未満といったラインには、それぞれ特例や簡便な処理方法があり、中小企業にとっては節税の観点からも重要であること。
  4. 制作会社には、見積書・請求書の段階で「サイト制作費」と「システム開発費」を分けてもらうと、会計処理の自由度が高まること。
  5. 5.運用費(ドメイン・サーバー・保守費など)は、会社の方針に沿って勘定科目を決め、継続的に同じ考え方で処理することが大切であること。

ホームページは、いまや会社の顔であり、大切な営業・採用・情報発信のツールです。会計上の扱いを正しく理解しておくことで、決算前にリニューアルやシステム導入のタイミングを検討したり、補助金・助成金を活用して投資負担を抑えたりといった、経営戦略の一部としてホームページ制作を位置づけることができます。

最終的な判断は、必ず専門家と一緒に

本記事の内容は、一般的な税務の考え方をもとにまとめたものです。実際の会計処理は、会社の規模や業種、契約内容、その時々の税制改正などによって変わる場合があります。
最終的な判断は、必ず顧問税理士の先生や専門家にご相談のうえで行ってください。

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参考にした主な公的情報

・国税庁タックスアンサー「No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数」
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5461.htm

・国税庁タックスアンサー「No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5403.htm

・国税庁タックスアンサー「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm

・国税庁タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm

・国税庁「中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例制度」
 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tokurei/syougaku_shisan.html