EFO対策完全ガイド:問合せフォームの離脱率を改善しCVRを最大化する10の施策
Webサイトを運営していると、「アクセス数は増えているのに、お問合せや資料請求がなかなか増えない」というお悩みをよく伺います。
その原因は、必ずしも広告やSEOだけにあるとは限りません。多くの場合、最終地点である「お問合せフォーム」でユーザーが離脱してしまい、せっかくの見込み客との接点を逃してしまっているケースが少なくありません。
さまざまな調査でも、特に入力項目が多いフォームでは離脱率が50〜70%前後に達することが報告されています。つまり、購入やお問合せをするつもりでフォームまで来てくれたユーザーのうち、半分以上が途中で入力をやめてしまっている可能性があるということです。
本記事では、この「取りこぼし」を減らし、Webサイトからの成果を着実に伸ばしていくための考え方として、「EFO(Entry Form Optimization:入力フォーム最適化)」をご紹介します。単なるデザインの流行や精神論ではなく、ユーザー心理と行動データに基づいた改善のポイントを整理し、貴社のWebサイトを「成果を生む資産」として育てていくためのヒントをまとめました。
目次
EFO(フォーム最適化)が優先度の高い課題である理由
Webマーケティング全体の中で見ると、EFOは「比較的少ない投資で成果改善を狙いやすい施策」の一つと考えられます。その理由は大きく3つあります。
1. 広告費を増やさずに成果を伸ばせる
例えば、月間のフォーム到達数が1,000件、現在のコンバージョン率(CVR)が1.0%だとします。この場合、月間の成果数は10件です。
ここで、広告費を倍にしてアクセスを2,000件に増やすこともできますが、そのためには相応のコストが必要になります。一方、EFOによってCVRを1.0%から2.0%に改善できれば、同じ1,000件のアクセスでも成果数は20件となり、結果として2倍の成果を得られます。
実際の数値は業種やフォームの内容によって変わりますが、フォームの使い勝手を見直すことで、「今あるアクセス」をより有効に活用できるようになる、という点がEFOの大きな特徴です。
2. ユーザー体験(UX)の向上が、間接的にSEOにもプラスに働く
Googleは近年、ページの表示速度やモバイルでの使いやすさなど、「ユーザー体験(UX)」を検索順位の判断材料の一つとして重視しています。
使いにくいフォームは、ユーザーにストレスを与え、直帰率の上昇や滞在時間の短さにつながりやすくなります。これは結果として、「ユーザー満足度が高くないサイト」と見なされるリスクがあります。
逆に、ストレスなく入力完了できるフォームは、サイト全体の利用体験を底上げし、滞在時間や回遊性の改善を通じて、長い目で見ればSEOにも良い影響を与える可能性があります。フォームを整えることは、単なる「入力欄の調整」にとどまらず、サイト全体の品質向上にもつながる取り組みだと言えます。
3. 機会損失(見えないコスト)を減らせる
フォームまで到達したユーザーは、すでに貴社の商品やサービスに強い興味を持っている、いわば「見込み度の高い層」です。
このユーザーが、「フォームが使いにくい」「入力が面倒」「少し不安」といった理由だけで離脱してしまうと、将来の優良顧客を競合他社に譲っているのと同じことになります。
広告費や制作費のように目に見えるコストと比べて、「本来得られたかもしれない成果が失われるコスト」は意識されにくいものです。EFOは、この見えない損失をできるだけ減らすための取り組みとも言えます。
ユーザーがフォームから離脱する「3つの心理的なハードル」
具体的な改善策に入る前に、なぜユーザーはフォーム入力の途中で離脱してしまうのか、その背景にある心理を押さえておきましょう。大きく分けると、次の3つのストレスが原因になっていることが多いです。
① 面倒くさい(労力のストレス)
入力項目が多すぎる、同じ内容を繰り返し入力させる、スマホだと入力しづらい──こうした「手間の多さ」が、一番分かりやすい離脱要因です。
現代のユーザーは忙しく、少しでも「これは面倒だ」と感じると、すぐに画面を閉じてしまいます。特にスマホからのアクセスが多い場合、入力にかかる手間をどこまで減らせるかが重要です。
② 不安である(心理的ストレス)
「この情報を入力して大丈夫だろうか」「個人情報を悪用されないか」「送信したらしつこく営業されるのではないか」──こうした不安が少しでも頭をよぎると、入力の手が止まってしまいます。
特にBtoBの資料請求や、高額商材の見積り依頼などでは、「営業されるのでは」という心理的なハードルが高くなりがちです。フォームの設計だけでなく、注意書きやマイクロコピー(短い補足文)で、この不安をどこまで和らげられるかが鍵になります。
③ 分かりにくい(認知的ストレス)
「どこに何を入力すればよいのか分からない」「エラーの理由が分からない」「必須項目が分かりにくい」──このように、理解しにくいフォームも離脱の大きな原因です。
ユーザーに「考えさせてしまう」フォームは、それだけでストレスになります。パッと見た瞬間に「どこから、どう入力すればよいか」が分かる作りになっているかどうかが重要です。
CVRを改善するEFO具体的施策【基礎編】
ここからは、上記のストレスを軽減し、スムーズなコンバージョンにつなげるための具体的な改善ポイントをご紹介します。まずは、どのサイトでも取り組みやすい「基礎編」です。
1. 入力項目を「本当に必要なもの」まで絞り込む
EFOの基本は、まず項目を減らすことです。海外のマーケティング事例では、フォーム項目を4つから3つに減らしただけで、完了率がおよそ50%改善したという報告もあります。
すべてのサイトにそのまま当てはまるわけではありませんが、「項目を減らせば入力完了率が上がりやすい」という傾向は、多くのケースで共通しています。
例えば、次のような項目は、本当に今の段階で必要なのかをあらためて検討してみてください。
- 会社名は、メールアドレスのドメインから推測できないか
- ふりがなは、本当に運用上必要か(氏名が漢字だけで足りないか)
- 資料をメールで送るだけなら、住所は都道府県までで足りないか
営業担当者からは「情報は多いほど助かる」という声が上がりがちですが、まずは「一度接点を持つこと(リード獲得)」を優先し、細かい情報はメールや商談の中で確認していく、という考え方も重要です。
2. 必須項目と任意項目を一目で分かるようにする
ユーザーは、どの項目を「必ず入力しなければならないのか」をすぐに知りたいと思っています。
よくある「※」マークだけでは見落とされやすく、小さな注釈も読み飛ばされがちです。必須項目には、項目名の横に目立つ色(赤など)で「必須」と表示し、任意の項目には「任意」と明記して、心理的な負担を減らしましょう。
そもそも任意項目が多い場合は、本当に必要なものだけを残し、それ以外は思い切って削除することも検討してください。
3. 住所自動入力機能を導入する
郵便番号から住所を自動入力する機能は、今では多くのECサイトや申込フォームで採用されています。
住所入力は、特にスマホユーザーにとって負担の大きい作業です。郵便番号を入れるだけで都道府県・市区町村まで自動入力されるだけでも、入力時間とストレスは大幅に軽減されます。
多くのEFOツールやフォーム作成プラグインには標準機能として備わっていますので、まだ導入していない場合は、優先度高く検討する価値があります。
4. プレースホルダー(入力例)を正しく使う
入力欄の中に薄い文字で表示される入力例(プレースホルダー)は、ユーザーに「ここには何を書くのか」を直感的に伝えるのに役立ちます。
- 悪い例:「電話番号を入力してください」
- 良い例:「例:03-1234-5678(ハイフンなしでも可)」
特に、全角・半角やハイフンの有無でエラーになりやすい項目は、入力例を丁寧に書くだけでもエラー回数を減らすことができます。
ただし、プレースホルダーは入力を始めると消えてしまうため、「項目名(ラベル)」そのものを兼ねさせるのは避けてください。必ず、入力欄の外に項目名を表示し、入力中も何の項目か分かるようにしておくことが大切です。
プロが実践するEFOテクニック【技術・UX編】
基礎的な改善に加えて、技術的な工夫やUX(ユーザー体験)の工夫を取り入れることで、フォームの完了率はさらに高めることができます。
5. リアルタイム・バリデーション(即時判定)を導入する
従来型のフォームでは、すべての項目を入力して「送信」ボタンを押した後に、画面が切り替わってから「エラーがあります」と表示されるケースがよく見られます。
ユーザーからすると、「せっかく全部入力したのにやり直し」と感じてしまい、大きなストレスになります。この段階で離脱してしまうユーザーも少なくありません。
リアルタイム・バリデーションは、各項目を入力したタイミングで内容をチェックし、不備があればその場で「メールアドレスの形式が正しくありません」などと表示する仕組みです。
また、正しく入力できた場合には、入力欄の枠を緑色にしたり、チェックマークを出したりすることで、「きちんと入力できている」という安心感を与えることができます。
6. スマホでの入力を前提に、キーボードを自動切り替えする
スマートフォンからのアクセスが多い場合、入力のしやすさは特に重要です。
例えば、電話番号入力欄をタップしたときに、通常の「かな入力キーボード」が表示されると、ユーザーは数字入力モードに切り替える一手間が発生します。このような小さな手間の積み重ねが、離脱につながります。
HTML側で次のような属性を設定することで、項目に応じた適切なキーボードを自動で表示させることができます。
- 電話番号:type=”tel”(数字キーボードを表示)
- メールアドレス:type=”email”(@マークなどが押しやすいキーボード)
- 数値入力:type=”number”
このように、ユーザーの「ワンタップ」を減らす工夫を積み重ねることが、スマホでの完了率を上げるうえで大きな意味を持ちます。
7. マイクロコピーで心理的なハードルを下げる
フォームの周囲に添える短い文章(マイクロコピー)は、ユーザーの不安を和らげるうえで非常に効果的です。
- 送信ボタンの文言 「送信する」よりも、「無料で資料を請求する」「今すぐ相談する」といった、ユーザーにとってのメリットが分かる表現にすることで、一歩踏み出してもらいやすくなります。
- 安心感を伝える一言 電話番号の入力欄の下に「※しつこい営業電話はいたしません」、メールアドレスの下に「※いただいた情報は資料送付以外の目的には使用しません」といった一文を添えるだけでも、心理的なハードルは大きく下がります。
- 所要時間の明示 フォームの冒頭に「入力は約1分で完了します」と記載しておくと、「これなら今入力しても良さそうだ」と感じてもらいやすくなります。
8. 不要なリンク(“逃げ道”)をなくす
フォームページまで来たユーザーには、「入力して送信すること」に集中してもらうことが重要です。
そのため、フォームのページでは、グローバルナビゲーションやサイドバーのバナーなど、他ページへ移動してしまう導線はなるべく減らした方が良い場合があります。
ランディングページ(LP)のように、フォームへの申し込みだけに絞った構成にすると、「他のページを見ているうちに、いつのまにか離脱してしまう」という事態を防ぎやすくなります。
9. ステップバーで「あとどのくらいで終わるか」を見せる
特に入力項目が多い申込フォームでは、「一体どこまで続くのか」が分からないと、ユーザーは途中で諦めてしまいがちです。
画面上部に「情報の入力 → 内容確認 → 送信完了」といったステップバーを表示し、今どの段階にいて、あとどのくらいで終わるのかを視覚的に示すことで、「もう少し頑張れば終わる」という気持ちを持ってもらいやすくなります。
ステップ数が多い場合も、「全5ステップ中の3ステップ目」といった形で、現在地を明確にしておくと、完走率が向上します。
10. フローティングラベルで見やすさと省スペースを両立する
スマートフォンなど画面幅の狭い端末では、限られたスペースでいかに分かりやすいフォームを作るかがポイントになります。
「フローティングラベル」は、初期状態では入力欄の中に項目名が表示され、入力を始めるとその文字が小さくなって欄の上部に移動するデザイン手法です。
これにより、入力中も「これは何の項目か」が一目で分かる一方で、画面全体としてはコンパクトに見せることができます。デザインとしても今のWebサイトになじみやすく、視認性・使いやすさの両面で有効な手法です。
EFOツール導入のメリットと選び方
ここまでご紹介した施策は、自社のエンジニアや制作会社に依頼して、個別にカスタマイズすることも可能です。
一方で、「EFOツール」と呼ばれる専用サービスを導入することで、入力支援機能や分析機能などをまとめて導入できる場合もあります。
EFOツールの主な機能
- 入力支援機能:住所自動入力、ふりがな自動入力、メールアドレスのドメイン候補表示(@gと入力すると@gmail.comなどを表示)など
- 分析機能:各項目での離脱率、入力にかかった時間、エラー発生回数などをデータとして記録
- レポート機能:日次・月次でフォームのパフォーマンスを集計し、改善の効果を確認
これらを一括して提供してくれるため、内部で個別開発するよりも短期間で高度なEFOを実現できるケースも多くあります。
ツール選定のポイント
EFOツールは種類が多いため、導入にあたっては次のようなポイントを確認するとよいでしょう。
- 導入のしやすさ 既存フォームのHTMLを大きく書き換える必要があるのか、それともタグを1行追加するだけで導入できるのか。自社の体制を踏まえ、現実的な導入方法かどうかを確認します。
- スマホ対応の充実度 スマートフォンからのアクセスが多い場合は、スマホUIに特化した機能(キーボード切り替え、入力補助、表示の最適化など)がどこまで備わっているかをチェックすることが大切です。
- コストと期待できる効果 月額料金は、数千円〜数万円と幅があります。フォームのPV(閲覧数)や、1件あたりのコンバージョン価値(LTVなど)を踏まえ、「どの程度CVRが改善すれば採算が取れるか」をあらかじめ試算しておくと、無理のない判断がしやすくなります。
改善のサイクルを回す:PDCAで「最強のフォーム」に育てる
EFOは、一度フォームを修正して終わりではありません。ユーザーの行動や利用環境は常に変化しますので、改善→検証→再改善を繰り返すことが重要です。
Google Analytics 4(GA4)などを活用し、次のような指標を定期的にチェックしていきましょう。
- フォーム到達率 サイト訪問者のうち、何%がフォームページまで来てくれたかを示す指標です。トップページやサービスページからの導線に課題がないかを確認できます。
- 入力完了率 フォームページに到達したユーザーのうち、どの程度が「送信完了」まで進んだかを示します。ここが低い場合は、入力項目の多さ、スマホでの入力しづらさ、エラー表示の分かりにくさなど、フォーム自体に改善余地があると考えられます。
- 送信完了率(CVR) サイト訪問者全体のうち、最終的に何%がフォームを送信したかを示す指標です。広告やSEOなど、集客全体の成果を見るときの目安として使えます。
例えば、「フォーム到達率は高いのに、入力完了率が低い」という場合は、フォームの見た目や項目数、入力中のストレスに問題がある可能性が高いと言えます。
一方、「フォーム到達率そのものが低い」場合は、そもそもフォームへの導線が分かりにくい、ページ内での訴求が弱い、といった上流側の課題が考えられます。
このように、数字をもとに原因を切り分け、「仮説 → 実行 → 検証 → 改善」というPDCAサイクルを回し続けることが、フォームを継続的に強化していくうえで欠かせません。
まとめ:お問合せフォームを「頼れる営業担当」に育てる
Webサイトのお問合せフォームは、単なる「連絡窓口」ではなく、24時間365日、休まず見込み客の情報を受け取り続けてくれる存在です。社内の営業担当と同じく、できるだけ「話しやすく、質問しやすい」状態に整えておくことが大切です。
そのためには、「エラーが出なければ良い」といった最低限の機能を満たすだけでは不十分です。いかにユーザーの不安を取り除き、迷わせず、気持ちよく入力してもらえるか──この視点を常に持ち続けることが、EFO成功のポイントになります。
今回ご紹介した10の施策は、どれも現場での実践を通じて効果が確認されているものばかりです。いきなり全部を一度に実施する必要はありません。まずは「入力項目を1つ減らす」「マイクロコピーを1つ追加する」といった、取り組みやすい箇所から始めてみてください。
小さな改善を積み重ねていくことで、気がつけばコンバージョン数が安定して増え、「フォームがボトルネックにならないサイト」に近づいていきます。
もし、「自社のフォームのどこに問題があるのか分からない」「社内だけでは技術的な実装が難しい」「EFOツールの導入を検討したい」といったお悩みがありましたら、専門の制作会社やコンサルタントに相談するのも一つの方法です。第三者の視点から現状を診断してもらうことで、思わぬ改善ポイントが見つかることも少なくありません。
貴社のWebサイトがお問合せや資料請求を安定的に生み出す「頼れる営業担当」となれるよう、ぜひEFOに継続的に取り組んでみてください。

